「よ! あの後どうなったか聞いていいか⁈」

 拓海は興味津々に結果を聞いてくる。もうテスト間近だと言うのに、こうものんきな……。

『どうもこうも……進展0だったが……』

「ふむ……以外と厳しそうだな……」

 そう、言われても仕方ないと言えばそうだが……。ただ、進展無しでこのまま終わるのは釈然としないのは俺の心の中では間違いなかったのだが……。

「よし、こうなったらいっそお前が田月に話しかけた方がいいんじゃないか?」

 拓海は突然、そう提案してきた。俺は反射的に席から立ちあがる。しかし、声は出ない。

「……ど、どうしたんだよ……」

 突然の事に拓海が困惑していた……が、それは周りも同じ事だった。周りのクラスメイトは突然の事に困惑の色を隠せていない。隣の席である阪南はそんな事お構いなしにぐっすり寝ていた。

「……どうかしたか?」

 首を横に振る。何でもないと伝えたかった。とりあえず、席にもう一度座り、ノートに殴り書きをする。

『と、とりあえず、どうしてそうなるんだ⁉』

 ノートを渡した。それを見た拓海は俺にノートを返すとき納得の表情をし、

「すまん、つい忘れてたわ……」

 と言った。忘れてたって……。

『一体どうやってそれを実行しろと?』

「あ、……う~ん、まあ気軽く、気軽くだな」

 かなり抽象的な表現だ。だが、なんとなく言いたい事はわかる。だが、それを実行するかしないかは人による。

『それを実行できたら良いんだが……』

「んまあ、俺がどうこう言う立場では無いのは重々承知だ。まあ、とりあえず足掻いて、足掻いていけばいい。それが解決方法だ」

 もはや適当に答えているとしか思えない返答である。自分と関係のない物事に深く関わらず、うまく距離を置くのが拓海なのであるが。

「……ねえねえ、天野くんて昌弘くんと仲が良いの」

 阪南の声が横から聞こえる。どうやら、今日は珍しく起きていたようだった。

「おお、そうだが?」

 それに、拓海は即答する。これまでの会話を考えたら友達との話では無く、俺からの相談事か拓海が事細やかな情報をガンガン話すかどちらかで、他愛もない話などほとんどした事が無い。

 簡単に言えば、協力関係に近いものだ。拓海が俺に好意を持って話しかけてくれた分、本当に安心だ。

「へえ! そうなんだ! 昌弘~、私にもちゃんと話してよ~」

 ついさっきまでくん付けだったのに、何故ここにきて呼び捨てになっているんだ。

「んで! 天野くんとはどんな話してるの⁉」

 少し阪南には答えづらいものだ。俺は苦笑いで誤魔化そうとする。

「……ちょ、ちょっと何その顔~」

 当の本人は少し困惑しているような顔で聞いている。少し引いているような気がするような……。

「まあまあ、阪南さん。昌弘は少し気難しいんだよ~」

 多分、拓海はフォローのつもりだろう。だが、それをフォローというには突っ込み所が多すぎる。

「ああ、なるほど。昌弘もそんなところあるよね~」

 呼び捨ては治らない上、思いっきり拓海のフォローをそのままの意味で受け取っている。俺は違うとバツ印を作って抵抗した。