「いやあ、やっぱりおいしいよね!」

 彼女はそう言いながらハンバーガーを食べる。食べ方は下品とは言えないが、上品とも言えなかった。

 ……この様にハンバーガーショップで食べる事になったのだ。かなり無難な選択ではあった。

 ちなみに、俺は普通のハンバーガーと炭酸ではない飲み物だけで済ませたが、阪南の方はメニューで見た感じ、割と高めのハンバーガーの他にコーラとポテトを頼んでいた。

 阪南は、俺が頼んだものを見て食べる量が少なすぎると突っ込んでいた。俺にとってはこれが一番いい食事だとは思ったがために阪南は逆に食べる量が多すぎると思った。

 しかし、その事は女子にはタブーな話題であるため、あえてその事は言わなかった。もちろん彼女は量が多い事を気にせずにおいしそうにほおばっている。

 ただ、改めて確認すると、気になった事があった。

『……あんなに見て回っていた様子なのに、何で洋服じゃないんだ?』

 これを手帳サイズのノートに書いてスッと阪南の前に差し出す。ちなみに手帳サイズなのは前に意志疎通するために使ったノートが大きかったからである。

「これねぇ~……。ちょっといい感じなの、これぐらいしかなかったんだ~……あはは」

 と彼女は答えた。だが、俺は阪南があんなに服を見回っていたというのに何故、本なのかと突っ込みたい。

「……そうか」

 俺は納得したという風に相槌を打つ。心の中ではまだ疑問が残っているのだが……。

「そういうこと! ささ、食べた!」

 彼女は笑顔でそう言って、話を終わらせた。まあ、彼女がそう言っているのでこれ以上その事に話していても仕方がないのでハンバーガーにありつく。

 しかし、今日は何かがおかしい。あくまで気のせいなのかもしれないが、阪南が俺に対して少し挙動不審な気がする。


 そもそも何故服を見ているときに本屋に行くように促していたのか?それが一番の謎だった。


 昼食を食べ終わった俺は、先に食べ終わっていた阪南に次はどうするかを聞くことにした。しかし、あれだけの量を俺より先に食べるとは……。まあ、それは置いておいて、ノートに書きこんで阪南に見せる。

 阪南は俺がノートに書いたものを良く凝視する。そして、姿勢を戻すと、

「そっか、じゃあ私ちょっと公園行くから好きにどっか見てきてね!」

 そう言って阪南は荷物を持って席を立ち、店の自動ドアを開けて颯爽と歩き去っていく。俺はその後を慌てて追いかけて行く。

 ちなみに、話に出た公園は今いたハンバーガーショップからわりと近い場所にある。しかし、公園に行ってもあまりする事は無いのではないかとは思う。

 彼女は急ぎ足で街中を駆けていった。まるで、俺から逃げようとしてる様な行動に戸惑うが、俺は急いで彼女の後をついていく。

 阪南はこちらに気づいたのか、もう走っているというレベルでスピードを上げていく。彼女は俺に見られたくない事があるのだと確信する。