真生は高坂のベッドを借り、制服のまま、横になった。
寝間着代わりになにか貸してやろうと言われたのだが。
突然、飛んで元の時代に戻ってしまったら、制服がなくなってしまうからだ。
外のガス燈の明かりがカーテン越しに見えた。
静かだ。
車も走ってないし、暗いから、人が夜中に騒いだりとかないんだな、と思う。
それにしても、今日はなかなか飛ばないな、と思いながら、真生は目を閉じる。
そうしていると、過去に居るような感じはなかった。
高坂の舶来物らしい大きなベッドのクッションも良かったし、シーツからはいい香りがしていた。
高坂さんの匂いだな、と思う。
そんなに自分の時代と違いはないかもしれないけど。
でも、ここは流れている空気が違う――。
いつ、なにをしているときも、みな、どこか身構えている。
もうすぐこの平和が終わること、知っているかのように。