複数人で使う仕様のせいか、鍵はない。

 いきなり暴漢とか入ってきたら、どうすんだろうな、これ、と思いながら、真生は木の桶で身体を流すと、広めの湯船に浸かる。

 あー、あったかいや。

 気持ちいい……。

 しばらく目を閉じて、お湯の温かさが身体に移っていくのを感じていたが、やがて、目を開け、真生は広い浴室を眺めた。

 今とそう変わらないシャンプーが浴室の隅に置いてあるのを見つける。

 シャワーがないので、桶で流すことになるが、真生はそのシャンプーで洗ってみた。

 強過ぎる花のような香りが髪に残る。

 ああ、この香りだ、と真生は思った。

 あのときと同じ……

    花の香り――。