どうでもいいが、飛ばないではないか。

 戻ってきて暇なので、高坂の、というか、高坂と彼の叔父のレコードのコレクションなど見せてもらいながら、真生は不安になっていた。

 このままだとここで夜を迎えることになってしまう。

 そう思った真生は、高坂の部屋のドアを開けたり閉めたりし始めた。

「また、なにを始めたんだ」
と呆れたように高坂が言ってきた。

「いえ、ドアを開け閉めしているときによく飛ぶので」
と言うと、

「帰りたいのか」
と訊いてくる。

「まあ、少し」

「帰れないのなら、ここへ泊まってけ。

 別に襲わないぞ。
 女に不自由はしてないからな」

 でしょうね……、と斗真とよく似たその顔を見ながら、真生は思っていた。