「いえいえ、ちょっと珍しくて」
と真生が言うと、

「お前の時代には自動販売機はないのか」
と逆に訊かれてしまった。

 いえ、ありますけどね、と言いながら、ポイントが溜まったり、喋ったり、カードで買えたりするんですよ、と心の中だけで思う。

 もしも、本当にここが過去の世界なら、あまり未来の話をするのはよくないと思ったからだ。

「そうか。
 でもまあ、ひとつ買ってやろう」

 自分は余程物珍しげに見ていたのに違いない。

 結局、高坂にキャラメルを買ってもらった。

 高坂が十銭硬貨を自動販売機に入れると、映像が流れ始め、二銭お釣りが出て来た。

「これは、最初から八銭入れるというのはなしなんですか」
と言ったが、どうやら、そういう仕組みになっているらしい。

 お金を何種類も見分けるというのが出来ないのかもしれないと思った。