手書きの白い紙一枚のメニューを凝視していた真生だが、結局、子牛のシチウを食べた。

 高坂はカツレツだ。

 子牛のシチウは、いつも食べているビーフシチューほどガツンと来る味ではなく、さっぱりしていて、そう言われれば、ビーフシチュー? という感じだったが、これはこれで美味しかった。

「高坂さん、ここにはよく来られるんですか?」

 たまにな、と言う高坂に、
「洋食がお好きなんですか?」
と訊くと、

「好きとか嫌いとか考えたことはないな。
 軍では普通に出るものだし」
と言う。

 軍には、昔から、フランス人やドイツ人のお抱えコックが居るのだそうだ。

「お前がこういうのが好きかと思って連れてきただけだ」

「ありがとうございます……」

 意外に、いや、意外でもないか。

 優しいな、と思うと同時に、少し疑問にも思っていた。

 なんで、高坂さんは、私がこういうのが好きだと思ったんだろう?

 未来では、もっと洋食が流行っていると予測してのことだろうか。