「どうだった?」
トイレから戻ると、高坂はすぐにそんなことを訊いてきた。
「どうもこうも、トイレはなにも出ませんでしたが、廊下の途中で殺された殺されたとうるさい霊が出ましたよ」
と言ってみたのだが、そうか、と軽く流される。
いや、あまり聞く気がないのなら、訊かないで欲しいんだが……。
そう思いながら、真生は高坂の白い顔を見た。
あの這う男の霊。
学園にいる方はかなり記憶が薄れているようだが。
さすが、この時代にいるのは記憶も存在も生々しいようだな。
またなにかいたら嫌なので、カーテンが開け放されたままの窓から、ガス燈の灯りと木々が見えた。
夜も更けてきたようだな、と思う。
ぼんやりとそのガス燈に照らされた外を見ながら、真生は呟いた。
「温かいですよね、ガス燈の灯りって」