さっきまでそんなものなかったのに、カーテンが一部、人の形に盛り上がっていたからだ。

 高坂は気にしていないようだが、真生はそこまで行き、カーテンを開けてみた。

 なにもいない。

 ただ、ぼんやりと道路にあるガス燈の灯りが見えるだけだった。

「……いっそ、なにかいた方がマシでした」
と呟くと、高坂は、

「そうか? この部屋の外で、うごめいているような連中がカーテンの陰にいたらどうする?」
と言ってくる。

「それはそれで見慣れているので。なにもいない方がなにがいたのかな、と思って、妄想がふくらむじゃないですか」
と言うと、高坂は笑う。