「本当に高坂さんがやったんじゃないんですよね?

 院長先生と津田秋彦」

 言われるがまま、高坂の部屋で仕事をしていた真生は、そう訊いてみた。

「あいつら殺して俺になにかいいことでもあるのか」

「いえ、単に、津田秋彦とやらが消えても心配しているようにはないからです」
と言うと、

「心配はしてるさ」
と真面目な顔で高坂は言う。

「俺が疑われるからな」

「まあ、そうですよね。
 その疑い、晴らさなくていいんですか?

 院長になるのに障害になりますよね」
と言うと高坂は打っていたタイプライターから顔を上げないまま、渋い顔をする。

「まあ、あの院長が本物なら、院長に関しては、なにも問題ないわけですが。
 ご自分で調べてみられてはどうですか?」

「何故、俺が探偵のような真似を」

 そう高坂が言ったとき、あれっと思った。