確かに感じた高坂のぬくもりを思い出しながら訊く。

「で、でも、高坂さんは今、生きてますよね?」

「それで噂が立ったんだ。

 ここは死者を蘇らせる病院だと」

「……死者を蘇らせるって、医術でですか?」
と真生は訊いてみた。

 いや、既に、魔法陣がどうとかいう怪しい言葉が耳に入ってはいたのだが。

「高坂の父親は海外から、医学書と一緒に舶来物の骨董品なんかも取り寄せていたらしいんだが。

 古い革鞄の中に『蘇りの書』という書物が入っていたらしい。

 しばらくは他の骨董品と一緒に飾ってあったようなんだが。

 高坂が病(やまい)に感染した頃から見なくなったという話だ」

「その書物は今、何処に……?」

「さあて、何処だかな。

 あるとしたら、前院長の荷物を昭子が邪魔だと言って押し込めてしまった礼拝堂の図書室か。

 それか、高坂の部屋かな」
と八咫は見ようによっては、いつも笑っているように見える顔で言う。

 もちろん、愉快だから笑っているという感じではない。

 いや、彼的には愉快なのかもしれないが。

 見ている人間は皮肉と恐怖しか感じない。