「犯人は高坂かな。

 なかなか次の理事長に自分を指名しない院長にしびれを切らしてやってしまったのかもしれんな」

 薄情な友人だ。

「高坂さん、疑われてるんですか?」

「そうだな。
 まあ、軍人といえども、正当な理由もなく民間人を殺してはまずいだろうな。

 私は別だが」

 何故、私は別なのかは、あまり聞きたくないな……と思っていた。

「それにしても、高坂め。
 海軍に入るにしても、軍医になっていれば、また状況も違ったのに」
と八咫は愚痴りはじめる。

 そうだ。
 高坂さんに医師の資格でもあったら、もっと話は早かっただろう。

 理事長兼院長ということで、この病院を掌握出来ていたかもしれないのに。

「高坂さんは、なんでお医者様にならなかったんですかね?」

 そう訊いてみたが、八咫は、
「さあな。
 高坂に訊いてみろ。

 お前になら、本当のことを話すかもしれないぞ」
と言う。