「私たちは立ち止まる事など出来ない。

 お前のいた世界で、日本が負けているのなら、それはきっと、私たちの進む未来ではない」

 黙った真生を、なんだ? と八咫は見る。

「いや―― すみません」

 少し感動してしまった。

 きっぱりとした八咫の言いように。

 だが、こんな青年たちがたくさん命を落としていったのだろうと思うと、辛くもある。

 あなたたちには想像もつかないだろう。

 負けたあとの日本の方が、今より遥かに豊かだ。

 ここを見たあとで、自分たちの居る世界を思うと、ふと、楽園だったかと思うほどに。

 そんな感傷を振り払うように、
「それより、院長の件ですが」
と言うと、ああ、と八咫は笑う。