「この病院は死者を蘇らせるという噂があるそうですね。
 もしかして、今回の院長の件もそれだと?」

「お前は頭の回転が速そうだな。
 やはり、どこかのスパイか」
と八咫は訊いてくる。

「賢ければ、スパイ。
 人よりなにか秀でていれば、魔女、みたいな感じですかね。

 女のくせに、とか?」

 それはない、とこの時代の人間にしては珍しく八咫は言い切った。

「女を莫迦にすることに意味はない。

 我々は母親に産み育てられた。

 母親が賢くなければ、その子供も賢いわけはない」

「……なるほど。

 まあ、この時代の人は女を莫迦にしているというより、大事にしたり、褒めたりしたりすることが照れくさかったのかもしれませんね」

 そんな真生の口調に、八咫はなにかを見定めようとするかのように、片目を細めて真生を見る。

「本当に未来から来たとでも言うつもりか」