真生は高坂に連れられ、元の廃病院へと戻っていた。
仕事の説明を受けていると、誰かが扉を叩く。
が、高坂が返事をする前に、勝手に開いた。
「高坂」
そう呼びかけながら、高坂とは違うカーキ色の軍服を着た男が現れる。
陸軍の制服のようだ。
真生が肩章を見ても、階級はわからないが。
その口振りからして、高坂と同程度の階級のようだった。
男は驚くほど背が高く、顔は整っていたが、痩せぎすだった。
だが、さすがは軍人。
細い中にも筋肉はしっかりついていそうだった。
高坂よりは少し年上に見えたが、軍の中での上下関係で大事なことは年齢ではないようで、その男を高坂は呼び捨てる。
「ちょうどいい、八咫(やた)。
これをお前の部下ということにしてくれないか?
如月真生という、俺の新しい愛人なんだが」
違います~っと文句を言う真生を、八咫と呼ばれた男がちらと見る。
一瞬で戦闘能力を見抜かれた気がした。
おそらく、五くらいだな、と思う。
上限、百で―― だ。