やがて、みな、持ち場に戻っていったようだが、ポーチのところに少し年配の女が残っていた。

 先程からの看護師たちの態度を見るに、彼女が今でいう看護師長のようだった。

 こちらを見ているので、なんとなく頭を下げると、下げ返してきた。

 高坂が自分を連れてそちらに行くと、師長は自分を真っ直ぐ見据え、
「戻ってこられたんですね」
と言ってきた。

 え? と思っていると、高坂が、
「いや、似てはいるが、別人だ」
と返す。

 そうですか、と表情を変えることなく、彼女は言った。

 看護婦長の渕上靖子(ふちがみ やすこ)だと名乗る。

「あの、如月真生です」

 よろしくお願いします、と頭を下げた。

 何がよろしくなんだかわからないが、と思いながら。