真生は、寄り添いながら、エントランスの階段を上がっていく二人を眺めて言った。
「でも、確かに、夫人がやったにしては、仲むつまじいですね」
「だから、おかしな噂が流れているぞ。
あの院長は本当に院長なのかと」
「……どういう意味ですか?」
「院長がグルグル巻きになってから、人が変わったように温厚になったからだよ。
まるで、失踪中の津田秋彦みたいにな」
そのとき、院長夫人、越智昭子(おち あきこ)がこちらを向いた。
高坂が申し訳程度に頭を下げてみせる。
昭子は高坂と自分を見、軽く黙礼しただけで、行ってしまった。
「夫人とも仲悪いんですか?」
と言うと、
「ほう。初めて見た人間でもわかるか」
と何故か楽しそうに高坂は笑っていた。
そのとき、
「高坂さん」
と看護師のひとりがこちらに気づき、やってきた。
他の看護師たちもそれで高坂に気づいたようで、全員が一斉に頭を下げる。
偉い人、というのは本当のようだな、と思った。
「でも、確かに、夫人がやったにしては、仲むつまじいですね」
「だから、おかしな噂が流れているぞ。
あの院長は本当に院長なのかと」
「……どういう意味ですか?」
「院長がグルグル巻きになってから、人が変わったように温厚になったからだよ。
まるで、失踪中の津田秋彦みたいにな」
そのとき、院長夫人、越智昭子(おち あきこ)がこちらを向いた。
高坂が申し訳程度に頭を下げてみせる。
昭子は高坂と自分を見、軽く黙礼しただけで、行ってしまった。
「夫人とも仲悪いんですか?」
と言うと、
「ほう。初めて見た人間でもわかるか」
と何故か楽しそうに高坂は笑っていた。
そのとき、
「高坂さん」
と看護師のひとりがこちらに気づき、やってきた。
他の看護師たちもそれで高坂に気づいたようで、全員が一斉に頭を下げる。
偉い人、というのは本当のようだな、と思った。