真生が高坂に連れられ行ったのは、廃病院の隣にある、この時代にしては珍しい白いコンクリートの病院だった。

 長い動きにくそうなナース服を着た女性たちが玄関先で誰かを出迎えている。

「ちょうどよかったな」
と巨木の側まで来て足を止め、高坂が言った。

 ダットサンだ、と真生は到着したその白い車を眺める。

 父親が集めている名車カタログで見たことがあるのでわかったのだ。

 当時の国産車の草分け的存在で。

 このダットサンを製造していた会社が今の日産自動車につながっているらしい。

 今見ても、お洒落だなと真生がそのクラシックな車を眺めていると、中から、着飾った女が降りてきた。

 小洒落たハットに手袋。

 これはこれでいい時代だな、と思える服装だった。