「だがまあ、これで俺が少し有利になったのは確かだ」
と言う高坂に、

「不利になったんじゃないですか?」
と真生は言った。

「誰が考えてもあなたがやったと思いますよね」

「そうか?
 若い愛人に逃げられそうになった昭子かもしれないし、妻を寝取られた院長かもしれない」

「そうですね。
 でも、なんだかもう、津田秋彦は死んだていで話が進んでいるのは何故ですか」

「生きているかもしれないが、このまま出て来ないのなら、俺とこの病院にとっては死んだも同然だ」

 そう高坂は言いながら、窓の外を見る。

 そこに、秋彦の霊でもいるかのように。

 それにしても、死者を蘇らせる病院というのはどういう意味なのだろうな、と真生は思った。

 本当に死んだ人間が蘇るとでも――?