この軍人さんに側を通られると、鼻先にカビと埃の入りまじったような匂いがぷんとし、咳き込みそうになるのだが、真生はなんとか堪(こら)えた。

 夏海たちには彼の姿が見えていないからだ。

 ここは昔、病院の敷地内だったらしく、時折、負傷した兵士や民間人、そして、忙しげな看護師たちが横切って行く。

 見える生徒たちが学園七不思議みたいなものを語っていたが。

 こんな場所だ。

 もちろん、七では収まらない。

 地下の階段を歩く白い服の女の霊。

 死体を引きずる女の霊。

 お前に殺されたと言いながら這ってくる男の霊。

 男の霊はたまに足をつかんできたりするが。

 他は特に害はないので、無視するのが一番だと言われていた。

 学校でこれだけ出るんだから、隣の病院はもっと出そうだなあ、と真生は同じ敷地内にある病院を見る。