「紅茶は好きか」
と問われ、はい、と真生が言うと、

「まだ飲む人は少ないが、俺は好きだな。
 それは取り寄せたものだが、国産のもなかなかだぞ。

 海外でも高い評価を受けているらしく、輸出の伸びも好調だ」
と言って、棚を指差す。

 日東紅茶の缶があった。

 淡い色彩の缶のデザインがレトロ調でお洒落だなと思ったが。

 この時代にはレトロじゃなくて、最先端だったのかなとも思う。

 そこで、
「霊か」
と少し笑った高坂が言ってくる。

「あいつら便利だぞ。
 侵入者が来ると浮かれて騒ぎだすからな。

 俺に毒でも盛られようものなら、わくわくして見に来るし」

 はは、と笑った真生だったが、今、自らが手にしている赤い紅茶を見つめる。

「それは俺が淹れたんだ。
 自分でもう飲んだ」
と冷ややかな口調で言われ、はは、すみません、と謝ると、一口、口にした。