「さっきって。
 ああ、後頭部に銃を突きつけられた真生です」
と言うと、なるほど、と高坂は重々しく頷く。

 そして、それ以上、その件に関しては、突っ込んではこなかった。

 高坂は肘掛けで頬杖をつき、言ってくる。

「これは、先代の院長の弟が作った曲なんだそうだ。

 越智哲治(おち てつじ)という人だ。

 哲治さんは先の戦争に行って、そのまま帰ってこなかったらしい」

 未完なんだよ、と高坂は言った。

「だからいいような気もしてる」
と目を閉じる。

 そうしていると、高坂の整った顔がより綺麗に見える気がした。

 不思議だな、と真生は思う。

 同じような顔なのに、斗真が目を閉じていても、綺麗だと思うだけで、なんの感慨も湧いてこないのに。