あの途中で引っかかるレコードを高坂はかけていた。

「来てもらおうか、高坂」

 日本は再び、泥沼のような戦争に向かおうとしていた。

 いつまでも見つからない病原体に業を煮やした軍は強硬手段に出ようとしていた。

 だが、軍があそこまで、あの病原体にこだわるのも、ここに生きた抗体が居るからだ。

 なにかあっても、自分たちは助かると信じているから。

 窓の外、夕陽の中を、飛行訓練中の戦闘機が三機、飛んでいるのが見えた。

 高坂は、それを見ながら、笑い、呟いた。

「これで終わりだ。
 さようなら――」

 真生が愛したガス燈が見える。

 あの曲が流れていた。

 あそこから先へとは進めない、あの曲が。

 だが、いつか、真生が未来でそれを奏でるだろう。