「あいつ、医師としては立派な奴だし、信念もあったからなというか、あるからな」

 真生は笑った。

 ……それでですか、と。

「そういえば、高坂さんは、津田秋彦が消えたことを心配しているようでもありましたけど。

 あれは、自分がそのことを知らせたせいで、軍に拉致されて、拷問でもされてるのかもと思っていたのかもしれないですね」

 真生はそこで、一息つき、
「私……シャワーでも浴びてきます」
と言った。

 八咫が、そんな熱演だったか? と言い出す。

「まあ、お疲れだったな。
 今度、ご褒美に、焼き肉でも奢ってやろう」

「八咫さん、まだそんなもの食べられるんですか。
 元気ですねえ」

 一体、幾つなんですか、と言って別れたあと、ハイビスカスの花束を手に、真生は体育館に向かった。

 併設されている運動部用のシャワールームを借りるためだ。

 花束は掴んだまま下に下げていた。

 出来るだけに自然にそうなるように。