「だが、高坂があそこを爆破したのは、軍に病原体を探させないためだけではなかったかもしれないな」

 え? と真生は八咫を見上げた。

 お前のためだよ、と彼は言う。

「お前の未来のため。
 未来に居るお前のためだ。

 ま、女にはわからん、男のつまらん感傷かな」
と少し笑ってみせた。

「真生、高坂が父親亡きあと、いざというときのために、唯一、菌の在り処を教えてたの、誰だと思う?」

「八咫さんじゃないんですか?」

「俺が教えられても困るだろう。

 俺は軍に言わないでいることは出来ないから。

 俺が罪の意識を覚えないためにも、あいつはそんなことはしない」

 そんな風に八咫は生理的に合わないはずの友を語る。

「津田秋彦だよ」
「えっ」