八咫はそこで笑い、

「既に効力はほとんどないうえに」

 つまらない菌だった、と言う。

「今となってはな。

 今の薬なら、隔離する間もないくらいに治る。

 もともとは海外から持ち込まれた菌だ。

 いつか別のルートで入り込んだときのために、高坂と父親はあの新館にも残しておいたんだろう。

 フェイクのためにあいつは、旧館にあると言い、あそこを探してたんだ。

 そちらだけに視線が集中するように。

 高坂は自らとともに、旧館を爆破することで、もう菌はないと軍に思い込ませようとした。

 この未来では、すぐに薬を飲めば、寝込むこともなく治るような病原体のために」

 真生が黙っていると、八咫は言う。