あの日、男を殺し、血塗れになった自分を高坂が洗ってくれたことを思い出しながら、真生は言った。

「あれと同じシャンプー、今も使ってるんですよ」

 ひとつだけ、希望を持てるとするならば、ここで高坂の霊を見たことはない。

 彼にとっては、二度も死んだ思い入れの強い場所だろうに。

「私が殺した男の霊も、多江さんの霊もここで見ました。

 百合子さんは、つい、最近まで生きていた。

 まあ、八咫さんの霊は現れませんでしたけど」

 今、生きてるだろうが、と八咫が睨む。

「高坂さんの霊は見てないんです。

 どこかで生まれ変わってくれてないかなあ、と思うんですが」

「他にも見てない連中居るだろ?」
と言われ、

「だから、そう信じたいだけなんですってば」
と答える。

「あの菌な」

 ふいに八咫はそんな言葉を口にした。

「爆撃を受けた新館のものは跡地から一応、拾い集めておいたんだよ。

 あの菌、残っていたようだ」

 え……。