「まあ、俺が、お前に命じられてた通りに」

 命じられたって人聞き悪いなあ、と苦笑いする。

「戦後、この爆撃跡地で病院を再開したいと言ったとき、最初に賛同して来てくれたのが、百合子だったからな」

 八咫にとっては、彼女もまた戦友と言ったところか。

「さっきの写真、見せたかったですね」

 誰にだ、とは八咫は言わなかった。

 わかっているからだろう。

「ああ、そうだ、真生。
 お疲れ様、よくやった」

 八咫が一種類の花で作られた花束を車椅子の下から出してきた。

 それは、あの真っ白なハイビスカスの花だった。

 あの高坂の部屋からガス燈を眺めるとき、いつも視界に入っていた。

 あの時代にそぐってなくて、常に目にとまっていたからだ。