丁寧に頭を下げ、当時の香りとともに成宮が去って行ったあとで、ぼそりと八咫が言った。
「爆撃当時、百合子は病院に居なかったんだ。
たまたま鍵を持っていた立ち入り禁止の礼拝堂に男としけこんでて。
礼拝堂は運良く、爆撃を逃れて、神のご加護だと一時期、噂になってたよ」
それで、百合子は助かったようだと言う。
「ついでにそのとき、妊娠したらしく、命の大切さをしみじみ感じたそうだぞ」
「その話、成宮さんにしないでくださいよ」
いい話がだいなしですよ、と真生は眉をひそめる。
っていうか、その子供が彼女かもしれないのに。
「そうか。
それで、私がこの間、礼拝堂の鍵をなくしたと報告したとき、怒られなかったんですね」
坂部は真生が鍵をなくしたと言ったら、叱らず、これを渡せと新しい鍵を持たされていたのだろう。
なんのことだかわからなかったと思うが。
しかし、なにが幸いするかわからないものだな、と八咫は笑う。
「爆撃当時、百合子は病院に居なかったんだ。
たまたま鍵を持っていた立ち入り禁止の礼拝堂に男としけこんでて。
礼拝堂は運良く、爆撃を逃れて、神のご加護だと一時期、噂になってたよ」
それで、百合子は助かったようだと言う。
「ついでにそのとき、妊娠したらしく、命の大切さをしみじみ感じたそうだぞ」
「その話、成宮さんにしないでくださいよ」
いい話がだいなしですよ、と真生は眉をひそめる。
っていうか、その子供が彼女かもしれないのに。
「そうか。
それで、私がこの間、礼拝堂の鍵をなくしたと報告したとき、怒られなかったんですね」
坂部は真生が鍵をなくしたと言ったら、叱らず、これを渡せと新しい鍵を持たされていたのだろう。
なんのことだかわからなかったと思うが。
しかし、なにが幸いするかわからないものだな、と八咫は笑う。