「真生?」
と高坂が振り返ったとき、そこに真生の姿はなかった。

 廊下にも近くのドアが外れた部屋にも人の気配はない。

 高坂は溜息をつき、
「落ち着きのない娘だな」
と呟く。

 高坂は、霊以外、人の気配のない廃墟に立ち、今まで真生の腕をつかんでいた己の手を見つめていた――。