だが、今の八咫の方が親しみやすくていい。

 人を殺さず、病院で生かしてくれるところも。

 しかし、この人こそ、戦地でも戦地じゃなくても、死ぬ覚悟だったのにな。

 不死身の称号は彼にこそ、与えるべきだったのでは、と真生は思っていた。

 真生、と八咫に呼ばれ、礼拝堂の外で振り向く。

 しゃきんと背筋の伸びた老婦人が立っていた。

「この間まで、うちの病院の産科の師長をされていた成宮さんだ。

 彼女のお母様もうちで働いてくれていた。

 二階堂百合子さん。

 少し前に亡くなられたが、生涯現役で、産科でみんなの手助けをしてくれていた」

 ……二階堂百合子。

「百合子さん、生きて、結婚されてたんですね」

「あの時代を生き抜いたからこそ、命が産まれる仕事に携わりたいと言って、ずっと産科の現場で頑張ってくれていた」

 あの百合子さんが、と思うと感慨もひとしおだ。