今日は創立記念祭だ。
戦時中の楽譜が見つかり、それをパイプオルガンで弾くということで、かなりの人が礼拝堂に集まっていた。
お偉いさんたちも来ているし、もちろん、八咫理事長も居る。
元気なことだ。
一音も間違うことなく弾いた真生を八咫は目を細め、ねぎらった。
「今日がコンクールなら、椅子が壊れなくても優勝できそうだったぞ、真生」
はいはい、と適当に返事をしたので、坂部が目をむいて怒ったが、八咫は満足そうだった。
たいそう健康に気をつけているらしい八咫の話を聞きながら、もう明日にでも死んでいい感じだったのに、変われば変わるもんだな、と真生は変に感心していた。