あの夕暮れどきと同じだ。

 そう弾きながら真生は思っていた。

 ステンドグラスに遮られて、本来の色が見えない夕陽が虹色に降り注いで揺れている。

 あのとき、弾きながら見上げた真生の目に、ステンドグラス越しに、あれが見えた。

 夕陽の中を飛ぶ三機の戦闘機。

 あれがすべての始まりだった――。

 曲は転調し、明るい未来へと向かう。

 感じる。

 あの波動が遠ざかって行くのを。

 この曲が完成に近づくとともに、過去と今が切り離されていく。

 高坂のレコードが途中で引っかかって聴けなくなっていたのは、あの先がなにか違う気がすると思っていた、哲治の想いが傷となっていたのかもしれない。

 終わりのない曲。

 終わりのない世界が今、終焉を迎えようとしていた。