殺すとこの女は言っているのに、自分は動けないまま、夕暮れの光の中のこの少女を見つめている。

 真生は再び、椅子に座り、先程の曲を奏(かな)で始めた。

 時折、高坂の部屋から聴こえていた曲だとようやく気づく。

 古い楽譜をめくりながら弾いていた真生だったが、途中から、それを放棄したように、目を閉じ、弾き始めた。

 曲調が変わったようだ。

 その音色に礼拝堂の古いステンドグラスが振動する。