幻かと思ってた、と軽口を叩く。

「あいつも寂しい奴だからな」

 真生は苦笑いしたあとで言ってきた。

「私、このところ、男の死体を引きずってばかりなんですけど――」

「待て。俺は死んでないぞ」

 自分をここまで引きずってきたのは真生だろうと思いながらそう言うと、真生は、
「でも、津田先生。
 あなたは今から死ぬんですよ」
と言う。

 自分を先生と呼び、敬語で話しかけてはくるが、腕を組み、自分を見下ろす真生の瞳は、どこか高坂にも似て見えた。

 あの常に上から他人を見下ろしている男に。