『……なんでこんなものまだ持ってたんですか』
と渋い顔をして言うと、

『まだ戦時中の銃を隠し持ってる奴はたくさん居るぞ。
 死んで遺品の中からよく出て来るそうだ』
とケロッとして言っていたが。

 これ、何人殺した銃なんだろうな。

 戦時下じゃないときに殺してそうなんだが、と思いながら、一応、ありがたくいただいていた。

 今、目の前に居る男は、八咫が向き合って来たような連中とは違う。

 所詮は医者だった。

 自分のやろうとしていることに集中するあまり、後ろはガラ空きだった。

 男は銃を構える手を緩めないまま、少しだけこちらを向いた。

 この時代、髪を染めたりはしなかったので、茶がかかった髪は自前のものだろう。

 その淡い瞳の色も。

 噂以上に綺麗な顔をした男だった。

 だが、優しそうな顔をしてはいるが、目が据わっている。

 私なら信用しないな。

 まあ、昭子さんも信用していたわけではないのかもしれないけど。