案の定、その人物はそこに居た。

 その瞬間が訪れないよう、出会わないようにしていた、その人物が。

 廃病院の、今は使われていない受付の陰、椅子の向こうに低く身構えた茶色い男の頭が見えた。

 膝をつき、銃を構えているようだ。

 高坂が出てくるのを待っているらしい。

 他人に任せていたのでは、一向に埒らちがあかないので、自分でやろうとしたようだ。

 そちらに集中しているその男は、足音を忍ばせ、近づいた真生には気づいていないようだった。

 真生は男のこめかみに後ろから小型の軍用銃を突きつける。

『これはおまけだ』
と八咫がくれたものだ。

 とは言っても、現代の八咫からもらったものなので、この銃も古く、撃てるかどうかはわからない。