その鍵は、時代が変わっていっても、人々の芯の部分ではなにも変わっていないことの象徴のように感じられた。

 病院の前を通ると、まだ灯りはついていて、軽やかな看護師たちの笑い声が聞こえてきていた。

 仕事が終わったあと、お喋りでもしているのかもしれない。

 百合子たちが居るのだろう、その灯りを見上げたが、近寄らずに廃病院に戻る。

 高坂の部屋の灯りはまだついていた。

 真生は足音を立てずに、そっと病棟に足を踏み入れる。

 頭の中の旋律は既にほとんど完成されている。

 もう時間がない。

 だから、これがこの時間に飛べる最後だろう。

 ということは、今が恐れていたその瞬間だということだ。