この学校の怪談がまた増えるな。

 深夜に鳴る戦時中からあるパイプオルガン。

 ちょっと笑ったとき、長く響く、パイプから空気とともに抜ける音が消えた。

 その瞬間、違和感があった。


 同じ礼拝堂で、同じパイプオルガンなのだが、なにかが違う。

 闇の中でもそれらがまだ真新しいことがわかった。

 ……飛んだのか。

 少し寂しくそう思う。

 ここは過去だ。

 だが、おそらく、高坂たちに会うことはない。

 外に出た真生は風に乗って頬に吹きつけてきた夜の匂いを嗅ぎながら、礼拝堂の鍵をかける。

 どの時代でもピタリとはまるのが、当たり前なのに、なんだか不思議だった。