手を下ろしながら、真生は訊いた。

「あの、高坂さんは海軍の方なのに、何故、病院の理事長代理を?」

 ここは軍関係者や戦地で負傷した人間が入る病院なのだろうか、と焼け落ちている廊下の向こうを見る。

 今日は日差しも明るく、林の隙間から見える新しい建物も白い壁に光が反射して眩しい。

「軍がこの病院に興味を持っているからだよ。

 この病院にはあるウワサがあるからな」

「……ウワサ?」

 その問いには答えず、高坂は言う。

「俺は、前理事長兼院長、越智和芳(おち かずとし)の隠し子だからな。

 俺をうまく利用して、病院を乗っ取りたいんだろうよ」

 隠し子だ、と堂々と言い放つ高坂に、あまり細かいことは気にしない性格のようだな、と真生は思った。

「ところで、お前、何処から来た」

 いや、そんなこと訊かれても困るんだが……と思いながら、真生は、

「……いや、えーと。
 未来からですかね?」
と言ってみる。

 自分でもよくわからなかったからだ。