いつか、あなたに恋をする――

「だったら、その霊はお前だな。
 この曲はお前にしか弾けないはずだから」

 何故、斗真がこの曲を弾きこなそうとしたのかわかる気がした。

 恐らく、斗真は気づいているのだろう。

 この曲が完成するときが、あの揺らぎの止まるときだと。

 タイムスリップ現象を引き起こす、あの揺らぎの――。

 『終わりなき世界のレクイエム』

 あの時代のあの世界への鎮魂歌である、あの曲を、自分の思い通りに仕上げることが、若くして死んだ哲治の、ただひとつの望みなのだから。

「物を作り出そうとする執念って凄いわよね」

 哲治は曾祖父が覚えて帰ったあの曲の最後を知る真生に、あの時代の空気を感じさせ、曲を完成させようとしている。

 高坂と出会ったことさえ、もしかしたら、そのためだったのかもれしないと思う。

 芸術家というのは薄情だ。

 他人の感情さえも、おのれの芸術の完成のためならば、利用する。