扉、開けなくても飛んじゃったな……。
揺らぎに呑み込まれ、学校に飛んだ真生は、ぼんやりそんなことを考えていた。
扉を開けると過去に飛ぶ、というのは、自分の思い込みというか、一種の暗示だったようだ。
最初に扉を開けたときに飛んだせいか。
扉を開けるときにはいつも、過去へ飛ぶのでは、と身構えるようになっていた。
それで、扉を開ける瞬間、自分の意識が過去とつながりやすくなっていただけだったのだろう。
斗真はなにもしなくても、飛んでるもんな……。
暗い学校の廊下に立つ真生は、さっきまで、高坂が二度と離すまいとするかのようにつかんでいたおのれの腕に手をやりかけ、やめた。
自分がそこに触れることで、高坂の指が触れていた感触が消えてしまう気がしたからだ。
――まだこの腕にも唇にも、高坂さんが触れていた感覚が残っているのに。
私が高坂さんに会えることは、もう永遠にない。


