軍のうるさい呼び出しから戻ってきた高坂は胸を高鳴らせていた。
自分と、あとはせいぜい八咫くらいしか生きた人間が居ないはずのこの廃病院に人の気配があったからだ。
八咫はさっき、一緒に呼び出され、まだあちらに居たから、ここに居るはずがない。
高坂は息を殺し、廊下に足を踏み入れた。
殺気はない。
刺客ではないようだ。
まさか……。
気がはやる。
真生の予言通り、彼女が現れたのだろうか。
そっと廊下を覗くと、足許に転がる死体を前に困ったように立ち尽くす真生の小さな後ろ頭が見えた。
ようやく会えた彼女を今すぐ抱き寄せたいと思いながらも、高坂はこらえた。
撫で回したくなるような真生の愛らしい後頭部に銃を突きつけ、高坂は、ひとつ息を吸うと、彼女に向かい、呼びかけた。


