真生と合わせた唇を高坂は離せなかった。
それをすれば、真生が消えてしまう気がしたからだ。
だが、離さなくても、揺らぎは来た。
真生はその時空の乱れに吞み込まれ、自分の腕の中からかき消えてしまう。
離したはずのない唇もその細い身体も、最初からなかったかのように消えていた。
……真生。
淡いガス燈の灯りが灯る夕暮れ。
窓の外のそれを見ながら、高坂は、ひとり立ち尽くす。
真生の愛したガス燈をぼんやり眺めていた。
辛いのは自分じゃない。
自分の許にはまた真生が現れる。
いつか。
いや、きっとそう遠くない未来――。


