あまり人に見られないようにして、真生は、また、過去に存在していた。
真生の恐れる『その瞬間』は起こっているときもあったし、起こっていないときもあったからだ。
自分は過去に飛んでやるべきことがある。
いや、やってしまったことがある。
だからこそ、高坂がその後も生きていて、自分と出会えたのだと知っていた。
『その人物』とは、そのときまで、顔を合わせたくはなかったから、真生は出来るだけ、存在を知られないよう、隠れていた。
いや、違うか、と思う。
『その人物』と顔を合わせるときがやるときだと知っていたから。
恐らく、チャンスは一度。
だから、いつもそれを持っている。
そのための準備が、いつかの夜のように役に立ち、高坂を守れることもあった。
或る日、呼び出された軍から帰ってきた高坂は、初めて会ったときと同じ白い軍服を着ていた。
懐かしい気さえするその姿を目に焼き付け、笑ったあとで、真生は、窓の外、暗闇の白いハイビスカスを見ながら、高坂に言った。
「……なんだか、ここで最後な気がします。
明日、八咫さんが戻ってこられますよね?」
高坂はそれで軍に呼び出されたのだった。


