真生はそのままじっとしていた。

 後ろ頭に突きつけられているものが、銃のような気がしたからだ。

 人を殺せるものだけが放つ、なんとも言えない冷たさと重さが軽く当たっているだけでも感じられたから。

「ゆっくりと振り返れ」

 この古びた穴だらけの病院でさえ、よく響く、いい声だ。

 振り返った真生は息を呑む。

 白い海軍の軍服姿の男が立っていた。

 だが、息を呑んだのは、それが原因ではない。

「お前は誰だ。
 何故、ここに居る」

 黙って自分を見上げている真生に、男はそう訊いてきた。

「名を名乗れ、娘」

「き、如月真生です」

 目鼻立ちのはっきりとした、少し異国風の顔立ち。

 驚くくらい整った風貌だが、真生は、これと同じ顔の男を知っていた。