いつか、あなたに恋をする――

 真生は注射器をケースにしまいながら、

「いや~、こっちに飛び始めたら、やっぱり、ここより後ろには飛べなくなっちゃったんですよ。

 こう、弦が変なところに引っかかったみたいな感じなんですかね。

 と言いますか、きっとやるべきことがあるからですよね」

 一人がよくわからないことを言ったあとで、あれ? と真生は眉をひそめる。

「こっちからなにか聴こえてきますね」
と彼女は言うが、自分には聴こえない。

 真生は廃病院の中を一人歩き、今は使われていない部屋の前で足を止めた。

 そこは確か、作曲家であった叔父、哲治が使っていた部屋だった。

 真生は扉を開けて中に入る。

 一緒に覗くと、一瞬、奥のクローゼットの前に懐かしい叔父、越智哲治(おち てつじ)の姿が見えた気がした。

 だが、すぐにふっとかき消える。