えっ? と振り返ったそこにはもう扉はなかった。

 視線の先に広がるのは、あの廃病院の廊下。

 今回は窓から日が差し込んでいたのだが。

 いっそ、明るくない方がよかったな、と真生は思っていた。

 足許に死体があったからだ。

 男の死体が、無造作に床に転がされている。

 思わず、死体の顔を見ようとしたとき、後ろ頭になにかが当たった。

「小娘、お前は何者だ」

 ふいにした声に、心臓が跳ね上がる。

 その声に覚えがあったからだ。