高坂は深夜、廃病院の廊下を歩いていた。
軍の司令で、ここに戻ってきて、しばらく経つ。
この静けさとそこここに霊の居る感じが落ち着くな、などと思っていると、
「高坂」
と誰も居ないはずなのに、ふいに名を呼ばれた。
見れば、いつの間にか、背後に銃を手にした男が立っていた。
見覚えのある男だ。
海軍兵学校で一緒だった。
侠気(おとこぎ)のある、いい奴だった。
「お前が生きていたら、軍は生物兵器に手を出してしまう。
頼む。
死んでくれ」
やれやれ。
ここに来てから、物騒なことばかりだ。
俺の愛人ということになっていた軍との連絡係も次々消えた。
もう女を使うのはやめた方がいい、と思う。


