いつか、あなたに恋をする――

 なにも取られるものなどないせいか、鍵もかかってはいない玄関扉を潜り、外に出る。

 ガス燈の灯りの上の月を見上げていると、誰かが病院から出てくるのが見えた。

 あら、と自分を見咎める。

 どうやら自分を知らないらしく、彼女はまるで不審者を見るかのように、こちらを見ていた。

 まったくややこしい、と苦笑しながら、真生は彼女に微笑みかけ、最初の挨拶をすることにした。

「こんばんは。

 初めまして。
 私、怪しいものじゃありません。

 高坂さんの新しい愛人の如月真生です」

 渕上婦長、と呼びかけた自分に、渕上は、おや? という顔をする。

 しかし、新しい愛人だ、と言ったことで納得されたようだった。

 いや、それで納得されるのもどうなんだ……とは思っていたが――。